2013/04/14

記憶の間




僕の実家には“ミセ”と呼ばれている納屋がある。
祖母が50年以上前に文房具店を営んでいたからだ。
小学生のころ、ミセで販売していた雑貨を見せてくれたことがある。昔の野球選手や役者が描かれたメンコやおはじき等の当時のおもちゃ、文房具などが箱のなかいっぱいに詰まっていて、僕は宝物を掘り当てた人のように目を輝かせたことを思い出す。
現在は鎌やむしろ、コメ袋などの農具、家の補修につかう大工道具などが置かれた納屋になっており、これらの物陰に埃をかぶった古いひきだし、奥には黄ばんだ分厚い冊子や薄暗く曇ったブリキ缶が積んである。
小さなすりガラスの窓からはあまり光が入らなかったが、夕日の暖かい反射がやわらかな色調を室内にそそぎこみ、いろんな景色が次から次へと目に飛び込んでくるのだ。
時の流れ、空間の広がりと共に在る自分。
僕がこれらを作品に綴るとき、そこで嗅いだ匂いや光の暖かさを記憶の奥で呼び起こすのかもしれない。
作品が部屋の風景となるよう
日々の営みに呼吸を与え

(高田竹弥)