2013/03/09

刷り





            
硬い銅板から柔らかい紙に写し取る、という行いの不思議。
感情とか価値観とかまで、くるっとひっくりかえるような・・・ささやかながらも
ずっしりとくる力技(ちからわざ)だなあと、思います。   

悩んだ分だけ版面には傷跡。
勢いのまま描きはじめた線も、気に入らなくて消した線の消し跡 も、
何かを落としてついた跡も全部一つの面です。

刷り上がりをめくる時は、ゆっくりゆっくりなのが鉄則。
ほんのかすかな傷ののインクも拾い上げる気持ちで。 
                                    (富田惠子)